オカダミカ Solo Exhibition 「ちてん」
2022.4.10 - 5.1
オカダミカ|Solo Exhibition「ちてん」
本展は NEW オープンのギャラリー&カフェ『SOQSO(ソーキューソー)』をメイ ン拠点とし、ART HOSTEL からアート複合施設にリニューアルした 『kumagusuku』、ナチュラルワインと料理のお店『NISHITOMIYA』、ワインとコー ヒーの『水上製作所』の、地点も空間も異なる4箇所での同時開催となります。
本展のタイトルである「ちてん」は、近年作者が日常生活や制作の中で関心を寄せる、物事の境界線や視点・立場の違い、それらの間を移動しながら物事を見つめる姿勢に由来します。対象を一面のみで捉えるのではなく、両面、更には多面で捉えることをタイトルの「ちてん」に込めながら、多様な手法で描いた絵画作品を展示致します。
SOQSO(ソーキューソー)では新作を中心に構成し、kumagusuku と NISHITOMIYA では「境界線」をテーマにした近作、水上製作所 では水彩画をベースとしたプリントを展示します。
4箇所の異なる空間をご覧いただき、それぞれの「ちてん」から作品を体験頂ければ幸いです。
会場1:SOQSO(ソーキューソー)
会期:2022 年 4 月 10 日[日] – 5 月 1 日[日](定休日:火)
時間:平日 11:00〜18:00、土日祝 11:00〜20:00
所在地:京都市下京区中堂寺北町18
問合せ先:info@soqso.jp
www.soqso.jp
会場2:kumagusuku
会期:2022 年 4 月 13 日[水] – 4 月 24 日[日](定休日:月・火)
kumagusuku.info
会場3:ナチュラルワインと料理のお店 NISHITOMIYA
会期:2022 年 4 月 13 日[水] – 5 月 1 日[日](定休日:火)
時間:LUNCH 12:00〜15:00(L.O14:00)水曜休、WINE&FOOD 18:00〜24:00 水・木曜休
nishitomiya.com
会場4:ワインとコー ヒー 水上製作所
会期:2022 年 4 月 11 日[月] – 5 月 1 日[日](定休日:火)
時間:13:00〜22:00(LO 21:30)
所在地:京都市中京区釜座通三条上ル突抜町793 MDSビル2F
問合せ先:075-286-7761
Profile
オカダミカ / micca
京都精華大学美術学部洋画専攻卒業。イラストレーション青山塾修了。村上龍原作「ダメな女」の装丁イラストレーションでデビュー。以後フリーイラストレーターとして国内外を問わず、装丁、雑誌、新聞、TV背景、アパレルとのコラボレーション等、多方面でコマーシャルワークを行う。最近はヴーヴ・クリコジャパン、MaxMaraなどのイベントでのポートレートサービスなども行っている。また、作家として個展やグループ展への参加など精力的に活動中。
近年の主な仕事
日本農業新聞「雪の名前」村山由佳 連載挿絵
第一三共ヘルスケア トランシーノ2 広告
シャンメリーアートボトル2021
集英社「風よあらしよ」村山由佳 書籍挿画
新潮文庫 「臆病な詩人、街へ出る。」 文月悠光) 文庫挿画
文藝春秋 「女性失格」小手鞠るい 書籍挿画
ポプラ社「はつ恋」村山由佳 文庫挿画
INTERVIEW
イラストレーター・オカダミカさんに訊く展覧会「ちてん」についてのアレコレ。
小説の装丁やカルチャー誌の挿画、アパレルブランドとのコラボレーションなど、文芸~ファッションを横断し多方面で活躍するイラストレーターのオカダミカさん。2022年4月10日から当ギャラリー「SOQSO」を皮切りに、京都の4会場で展覧会「ちてん」が開催されます。新作にアーカイブを加えた初の試みということで、デビューから現在まで、オカダさんの気になるアレコレについて訊きました。 Interview & Text / Tetsutoku Morita
大学時代を過ごしていた懐かしい京都で、アーカイブを含めた新作展をやろうと思いました。
ーー東京を拠点に活動されているオカダさん、関西での展覧会は久々だとお伺いしました。
15年ぶり位になります。今まで展覧会は新作で構成していて、残っていくものはネットに掲載しているんですが、スキャンだと誤差があるんですね。やっぱり細かい部分は伝わりにくい。過去の作品もある程度たまってきて、実物を見てもらいたいなと考えていた時に「SOQSO」がオープンするから何かやらないかとお誘い頂いて。京都は大学時代を過ごしていた懐かしい場所だし、それなら、振り返るという意味も込めて、アーカイブを含めた新作展をやろうと思いました。
ーー「SOQSO」で展示される最新作は京都で描かれたということですが、過去の作品はいつ頃のものから展示されるんですか?
古いもので6年前です。以前、北海道で展覧会をやった時はアーカイブも少しあったんですが近作だったので、今回はしっかり振り返っている感じになると思います。
ーー「ちてん」にはどういう意味があるんですか?
今まで関東だったので「場所が変われば見え方も変わる」ということと、「SOQSO」という新しいギャラリーをお届けしたいと言う気持ちに、京都を紹介したいという思いもあって。遠くから来られる方がいたら、自分の絵を理由に歩いてもらえる、道標になるようなリコメンドの場所としての「ちてん」という意味もあります。
ーー今回、京都の4地点が会場になっています。
「SOQSO」をメインに、アート複合施設の「kumagusuku」、ナチュラルワインと料理のお店「NISHITOMIYA」とナチュラルワインとコーヒーの「水上製作所」です。
ーー「kumagusuku」はカフェや雑貨店など地域に密着したアートスペースを展開されています。
室内に作品を展示し「展覧会に泊まる」というコンセプトのアートホテルだったんですが、昨年アート複合施設にリニューアルされました。京都に来た時は遊びに行ったり、注目していた場所だったので、今回、最初にお願いしました。kumagusukuでは近作「境界線」を中心とした展示になります。
ーー「kumagusuku」古民家をリノベーション建物や中庭の感じなど、普通のギャラリーとは異なる空間で、特別な鑑賞体験が味わえそうです。
そうですね。「SOQSO」から1.5kmくらいで。距離感的にもちょうどいいと思います。
ーー「NISHITOMIYA」と「水上製作所」は、どちらもナチュラルワインと料理のお店ですね。
「NISHITOMIYA」さんはコロッケが名物で、以前、五条にお店があったんです。その時からよく行っていて、去年、東山駅近くに移転され、お店が広くなり絵を飾れそうなスペースもあると聞いてお願いしてみたんです。
ーーどんな展示になりそうですか?
「NISHITOMIYA」さんはアーカイブの作品なのですが、お店の壁を見てサイズ感や雰囲などどれが合うか西冨さんと相談して決めました。実際飾ってみないと分からないところもあって、何回かやりとりをして良い感じになったと思います。
ーー「水上製作所」はどういった経緯で?
私はサンドイッチが好きなんですが、それを知ってる京都の友人に話したところ「おすすめの店がある」と誘われて行ったのが「水上製作所」さんでした。バケットサンドが超美味しくて、良い場所だなーと思って。意外とないんですよ。絵を飾れるスペースがあり、なおかつお店の雰囲気に自分の絵が合う所って。で、酔った勢いで「飾らしてもらってもいいですか」みたいなことを女性店主さんに訊ねたら、いいですよと言ってもらえて。その後、色んな所に行ったんですが、やっぱりハマるところってなかなか無いんですよね。それで、日を置いて改めお願いしました。水上さんは絵の展示されたことがないということなので、今回は、新作をプリントしてそれを飾って頂いています。
ーーどちらも実際にオカダさんが足を運ばれるお気に入りのお店。
そうですね。美味しいワインとご飯を食べてもらって、そこに私の絵が飾ってあるよって感じです。展示というよりはリコメンドのお店って言うノリですね。
SOQSO周辺は新しいお店ができていたり、中央卸売市場もあって面白い場所だと思います。
ーー「SOQSO」を含め、今回「ちてん」となった4つの場所は、全てここ一年の間にオープンしたりリニューアルされています。京都は長い歴史を持つ古都というイメージがありますが、新しいショップやアートスペースができたり、街が新陳代謝をしているなと思いました。
大学時代に住んでたのは左京区の修学院だったので、「SOQSO」周辺は知らない街だったりするんですけど、色々新しいお店ができていたり、中央卸売市場もあって面白い場所だと思います。
ーー大学時代を振り返って、絵に関してどんな思い出がありますか?
精華大学では洋画専攻で、油絵を勉強していました。絵を描き始めたのは保育園の頃、近くのお絵描き教室に行ったのが始まりです。絵が得意というより、やりたいことが他になかった。で、美大行くかみたいな感じで精華大学に行ったんですが、お絵描き教室の先生が油絵を描かれていて、その教室では、中学校になったらみんな油絵になるんですね。絵の具が大人用になるって感覚で自然に油絵を始めたんですが、関西の受験って本当の油絵で描かなんですよ。で、大学に入ってから油絵に触ったことがないって人が結構いて驚いたのを覚えてます。
ーー油絵からイラストレーションへに進まれたきっかけは?
大学を卒業して、仕事をしないなら実家に戻らないといけない。帰りたくない、けど就職する考えが全くなかったんです。でも、働くつもりはあって。自分は何になるんだろうと考えた時、「もう少し絵を続けたい」と思ったんです。大学の最後に友達と「二人展」をして。その時、色々感想を聞けて面白かったというのがあって。絵を描きたいけど仕事もしないといけない。じゃあイラストレーターがええんちゃう?みたいな。で、「イラストレーション」て本を買いまして、そこに青山塾ってイラストレーターの学校の広告が入っていて、ここに行こうと卒業直前に決めました。
ーー「青山塾」一択で京都から渋谷へ。
青山塾に行ってみたら授業が週一なんですよ。働きながら勉強するところで。先生も上京して来た子がいるとザワザワされていました。関西にもイラストの学校はあるから。でも当時はそれも知らなくて。イラストってなんだろう?くらいから始まって。で、選んだのが「ドローイング科」という基礎コースだったんですね。「あ、これはもう私、大学でやったし」と思ったんですが、そこから迷走期に入って行くんです。
ほっこりした絵が描けないとこじれていた時、二人の恩人と出会いました。
ーー早い段階で、壁が出現しましたね。
全然ほっこりした絵が描けない。今から思うと無理に描かなくて良いんですけれど、「みんなみたいに描けない」みたいな感じでこじれていったんです。学校では一回ゼロになれみたいなことを言われる。でも、私も長く描いているから悪い言い方すると手癖がついてるんですね。先生の言うこと聞きたいのにうまく反映できない。鉛筆をやめてみたら?とか色々アドバイスを受けて挑戦してみるんですが、どんどん気持ち悪いものが出来ていく。で、どうしようってなっていたとき2人の恩人が現れて。
ーー人生のポイントにはそういう出会いがあるんですね。
特別講師でいらっしゃった挿絵画家・グラフィックデザイナーの宇野亜喜良さんと装幀家の鈴木成一さんのお二人です。怖い顔とかマイナスな気持ちになる絵はイラストに使われずらいよって教えられて別にそう描いてやろうと思ってなけどこうなっちゃう、どうしようってなってる時に、宇野さんが来られて。特別授業で仕事の経歴を見せ頂いたんですが、すごく物憂げな絵が銀行とかのポスターに使われていたんですよ。私は昔から宇野さんが好きだったんですが、それを拝見して改めて大好きだと思って。こんなダークなのにこんな大きな広告か取れるんだから、私がへたくそなだけでネガティブが悪いわけではない。根本の趣味嗜好みたいなところはしょうがないやって思えて。以降は、鍛錬のほうに向かいました。
ーーもう一人の恩人、鈴木成一さんは、オカダさんがイラストレーターとして商業デビューされた村上龍さんの「ダメな女」の装丁を担当されています。
私は本好きで、本の装丁がイラストレーターの中で1番やりたい仕事だったんです。鈴木さんはブックデザイナーとして特別講義で来られたんですが、当時は今ほど装丁家と仕事自体が注目されてなくて。
ーー鈴木さんが作った地位くらいの感じはありますよね。
そうですね。鈴木さんもアーカイブを見せてくれたんです。装丁された本について、こういう内容だったから、折幅をこうして紙はこれにしてフォントはこうして、しおりの色や、表紙を外したらこんな絵が出てくるとか、本には構成するパーツが幾つもあって、それを合わせて全体で本を作っている。そのお話がとても面白くて、この人に私の絵を見て欲しいと思ったんです。でもその時は、まだこじれてるから宿題で描いた絵とか気持ち悪いし見て貰いたい感じじゃないんですね。でも学校の課題とは別で、自分の楽しみでスケッチを描いていて。線画で部分的にバンとやってる。
ーー今の作風に通じる?
そうですね。服が好きだったので、東コレとかを見ながら描いていた絵で。それを鈴木さんと青山塾の先生に見て頂いたところ、コメントがスッと入ってきたんです。今まで無理して描いてたものはアドバイスも全く入って来なかったですが、楽しみで描いてきてた絵に関しては、褒められる所じゃないポイントも納得できて。そこから一つクリアになりました。
ーー上京されて3年でデビューされますよね。
それが2年目だったんです。授業は1年更新で初年度はあっという間に終わって。で、あともう1年行くことにして、2年間はバイトしながら通いました。その間、鈴木さんと会えたのは3回だけだったんです。卒業の展示の時、鈴木さんにどうですかってお伺いしたら、ファイルでも送ってきなよと名刺を下さって。私だけじゃなくてそういう風に言ってくれる方なんですよね。それで学校が終わる前に資料を鈴木さんにお送りして。その後、雑誌の編集部に電話して会ってくれる人に資料を持っていきました。頑張ったんですが持ち込みって結構心がすり減る作業で。ディスられるような事はないんですが、私は好きだけど決める権利がないとか。確かに、雑誌ってイラストレーターの座席ってそんなにないんですよ。で、仕事も全然決まらないし、一旦腹をくくって就職することにして、その前に友達とイギリス旅行へ行ったんです。そうして帰ってきたら、携帯の留守電に鈴木さんからメッセージが入っていて。それが村上龍さんの「ダメな女」の装丁の依頼だったんです。
ーーすごいシンデレラストーリーですね。
憧れていた装丁の仕事で、デザイナーさんも鈴木さんだし、村上龍さんの本だからものすごく大きなポスターが丸の内とかにバンと貼られていてたりして。華々しかったんですが、その頃はSNSとかも存在せず、友達に伝える術も無くて、仲良い子に決まったよと話しただけでしたね。
女性を描く上で、柔らかさは全然意識していませんが、骨はすごく考えます。
ーーデビュー当時から、女性をモチーフにされていますが、どんな理由があるんですか?
生き物”を描きたいんですが、ある程度、思い入れが必要だと思っていて。例えば動物は好きでも嫌いでもないし、好みの男性を描くと言うのは何か違う。そう考えた時、自分が1番近しい生き物が女性というだけで。女の人である必要も実はそんなになかったりします。
ーー女性を描く上で意識されていることはありますか?
線をシンプルにしていきたいんですね。その上で、何かを少し残したいとなった時、自分が情報として持っているモチーフの方が描きやすいし、込めやすいというか。 何かうっすらと残る部品があるモチーフが自分にとっては女性だなと思ってます。あと、柔らかさは全然意識していませんが、骨はすごく考えます。ラフでふわっと描いても最終的に、友達に手だけのポーズをとってもらったりはします。省略して線が少ない分、結構ごまかしが効かなくて。それこそ絵だからなんとでもなるんだけど、実際、人間が取れる変な形を作りたいから、可能なポーズを探してますね。
ーーリアリティの追求もまた魅力を生む秘密なんでしょうね。“変”という言葉を借りるなら、オカダさんの作品は、水滴や染みも取り入れられていますね。
今回の「ちてん」のポスターに使った「others」というシリーズをはじめ、色々な作品に“紅茶の染み”を加えています。萌えポイントじゃないけど自然にできた形が好きなんですよね。絶対的な正解が作れないから楽しいんです。最後に水滴をぽたっと垂らしたりとか、自分がコントロールできないものを入れるって言うのはずっとやっています。
ーー自然といえば、作品内の髪や服の特徴的なグラデーションも石や砂の写真を使われているとか。
少し話が飛ぶんですが、元々、実家が洋服屋でオートクチュールをやってたんです。そのお店がなくなることになり祖父の代からやってるから70年分ぐらい布の在庫があったんですね。私は縫い物をしないので服にはできないけれどそのストックを使いたくて。以前、ミハラヤスヒロさんと一緒にお仕事させて貰って、その時、テキスタイルについて考える機会たあったんです。生地のパターンって面で見たらインパクトのある柄でも服にしてドレープが出ると、印象が変わりますよね。それが自分にとっては“染み”に近くて。
ーー作為のないところが魅力。
最初は布を見ながらドレープの感じを絵にしてたんです。けど、流れを描く時も手グセがあって、なんか違うと。これをそのままを入れたいと思って、シワの寄った生地を写真に撮って印刷して、それを絵に貼ってみたんです。
ーーなるほど。それがきっかけで、石や砂を使うように。
石はいきなり色が飛んだり、ケミカルな模様がパンと入ったり、どうしてこんな変なカラーになるのか不思議ですよね。「ちてん」のポスターに使った絵の髪が石のパーツなんです。茶色の部分が全部。テクスチャーを足して強調はしてるけど石なんです。これは描こうと思っても無理ですよね。砂は、スクリーントーンの感覚で濃淡でコントロールしやすいんです。山状に盛って影を出すことでグラデーションが作れたり、色々使えます。
ーーコラージュ的な表現になるんですか?
そうですね。写真を撮ってプリントして切って貼ってみたいな。自分自身の刺激にもなるんです。作業が楽になるかと思ったら、セレレクトするのが難しくて、先も読めなくなってきた。今は、どこでまとまるんだろうみたい時が楽しいです。自分が持ってないパレットの色が出てくるような感覚で。
境界線はあって、違うと認めた上でどう共存するかを考えないといけないのかなと感じて。
ーー「SOQSO」では新作を中心に展示されますがどういった内容になるんですか?
前回から「境界線」というテーマを軸にしていて、今回の「ちてん」もニューアンスは同じなんです。なので、新作と旧作に大きく違いはないかもしれないです。
ーー“境界線”が引かれることで、任意のA、Bという“地点”が生まれます。その関係性を考えると「境界線」から「ちてん」への移行な。テーマもう一段階深まった感じがします。
前回の展覧会で「境界線」というテーマを掲げたときに、自分の中でクリアになったんです。私は元々、左右対称の絵とか、鏡面をモチーフにしてきて。線画の良さって、線一本で境界が出来て、現実が変わるところだと思うんですね。それで、境界を無くす方向でやってきたんですが、最近いろんな方と話したり、社会問題を耳する中で、境界線はあって、違うと認めた上でどう共存するかを考えないといけないのかなと感じて。ただそれを直接作品に込めたいとは思ってないんです。
ーー新作の「others」もそうですね。一見、境界線がないようにも見えるけど“他者”というタイトルで。
「others」は最近描いている、寄り添う2人の体が繋がってるというシリーズなんですが、同一人物だと感じる方がいれば、友情深い関係をイメージする方もいます。私が付けたタイトルは「他人」ですが、意味は曖昧で。作者が言い切りたくないと思いもあるんです。隙間を作って、見る方に委ねたいんですよね。以前に描いた鏡面をモチーフにした作品があるんですが、湖に立つ人と、湖面を描き、それを逆さにしたものを左右に並べ、ぱっと見ると、上にある湖面に映った世界を本物だと思うんですね。視点はその程度のものだよという感じで。現実と非現実、あっち側とこっち側、必ず境界線はあるけれど「こっちとかあっちとかって変えれるよ」みたいな事をしたいんだと思います。同じ現象が起こっていてもどこから見るかで印象は変わるので。
ーー最後に、今回「ちてん」へ足を運ばれる方にメッセージをお願いします。
昔から「絵はみてくれる方がいて完成だと思う」と言ってたんですが、その気持ちは今も変わりないので、いろんな「ちてん」から絵をみてもらえたら嬉しいです。